『ナナカマドの咲く頃。』

1,540円(税込)

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塩沢みどり 監修 中川奈美 著 (原書房)

書評
―致知 2001年11月号―
 本書は、重度の脳障害を持つ塩沢早穂理さんとご両親、彼らを取り巻く人々の物語『早穂理。ひとしずくの愛』の続編。障害を持つわが子への苦悩や葛藤、喜び、感動を繰り返しながら辿り着いた人生の真実を、「水輪」という禅や瞑想の勉強会で伝える母・みどりさん。妻と娘を全身全霊で守る父・研一さん。本書は早穂理さんの二度の入院を軸に、研一さんの手術や大切な仲間の死、スタッフたちの「水輪」に寄せる思いが描かれ、彼らの生きることへの純粋さ、懸命さに心打たれる。「水輪」に集う人々が心の葛藤から解き放たれ、再び人生と真剣に向き合っていく姿を見るとき「幸せも不幸せもみんな自分が創りだしている」というみどりさんの言葉がストレートに心に響いてくる。

1. 物語の背景と前作からの歩み
物語の中心となるのは、重い脳障害を持って生まれた早穂理さんです。母親のみどりさんは、逃げ出すことのできない過酷な現実と24時間体制の介護にのたうち回るほどの苦しみを味わいます。
しかし、家族は絶望の極限を超えた先で、早穂理さんを「ありのまま」受け入れ、向き合う決意を固めます。その献身的な愛と命への向き合い方が周囲の人々の心を動かし、長野県飯綱高原の自然豊かな地へ移住して「水輪」という場を開くきっかけとなりました。

2. 本作『ナナカマドの咲く頃。』のあらすじ
本書は、飯綱高原の美しい四季の移り変わりとともに、「水輪」に集う人々とのさらなる絆の深まりを描いています。

・「水輪」という命の共同体:水輪には、早穂理さん家族だけでなく、精神的な生きづらさやハンディキャップを抱えた若者たちが「実習生」として集まるようになります。塩沢夫妻は彼らを我が子のように受け入れ、見捨てずに寄り添い続けます。

・タイトル「ナナカマド」に込められた意味:ナナカマドは「7回かまどにくべても燃え尽きない」と言われるほど強靭な木です。度重なる困難や試練に直面しても決して折れない家族の強さ、そしてその強さの分だけ他者に優しくなれる人間性の象徴として描かれています。

・「ひとしずく」から無限へ:一家族の小さな「ひとしずくの愛」から始まった営みが、スタッフ、ボランティア、そして悩みを抱える若者たちを巻き込み、多くの人々の魂を救う大きな「水輪(波紋)」へと広がっていく奇跡が綴られています。

3. 本書が伝えるメッセージ
単なる障害児育児の闘病記にとどまりません。人は嫌なことから目を背けて妥協して生きがちですが、運命から逃げずに命の本質と向き合ったとき、普通では味わえない本当の幸福や「生きる意味」を見出すことができるという、強い自己啓発的なメッセージが込められています。